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雲のグレーのような板紙「CLOUD GRAY」ができるまで

板紙の色といえば、思い浮かぶのは何色でしょう。

古紙利用率が高いため、原料の色がそのまま製品の色となることも多い板紙。たとえば、クラフトボールはクラフト系古紙や段ボール古紙を原料としているので茶色に、チップボールは雑誌古紙や新聞古紙を原料としているのでグレーの色をしています。
今回はそんな板紙の「グレー」にこだわった開発のお話です。

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私は、UMA/design farmでデザイナーをしています。手を動かして考えることが好きで、担当するパッケージデザインでは、板紙を選ぶ場面も多くあります。

そのなかでも、大和板紙株式会社さんの紙は、白やグレーのシンプルな板紙だけでなく、さまざまな色で染めた色板紙や、古紙原料ならではの風合いのある紙など、特色のある紙が多く、よく使っています。


DKクリームソフトを使用したパッケージ


チップボールを使用したパッケージ

板紙のことを、私からご相談することもあれば、製品や試作品を持って大和板紙さんがお話にきてくださることもしばしば。今回のCLOUD GRAYプロジェクトも、そんな大和板紙さんとの、いつもの会話から始まったのでした。

「新しい紙を試作しているので、ちょっと見てもらえませんか?」

そう言って見せてもらったのは、両面艶なしの真っ白な板紙。

「綺麗な白色だけれど、白い紙って世の中に沢山あって競合が多いので、分かりやすい特徴が無いと積極的に選んでもらうのが難しそうですね。」と感想をお伝えしつつ、思い出したことがひとつありました。

以前、裏鼠白ボール紙(裏がグレーの白板紙)の、グレーの面を使ってパッケージをデザインした際に、綺麗なグレーの色をした板紙が、案外少なかったのです。さらに、どの会社も同じように古紙原料を使っているので、似たような色味のグレーばかりでした。

白板紙の片面が、しっかりとこだわったグレーの色だったら、両面どちらの色も使えて良さそうだなぁと思いついて、お話ししてみたら、なんと、試作をしてもらえることに。

試作にあたって、どんなグレーが欲しいのか、あらためて考えてみました。大和板紙さん自身もグレーの板紙を沢山作ってきたからこそ、せっかくつくるのなら、なかなか無いグレーの板紙がいいなぁと、そこを追求してみることにしました。

まずは、板紙のグレーを研究するために、事務所にあった様々なメーカーの紙見本帳の中からグレーの板紙(ベージュの板紙や黄板紙も、比較のために含んでいます)を並べて、カラーチャートを作ってみました。
こうして並べてみると、グリーン系のグレーは市場に多くあるけれど、暖色系のグレーや、寒色系でもブルー系のグレーや、ニュートラルなグレーは少ないということが分かりました。また、淡い色味のグレーも少ないように感じました。

暖色と寒色のグレー2色をPANTONEの色見本から選び、2ヶ月ほどたったころ、ファーストサンプルができあがりました。
営業部の石田さん。出来立てのファーストサンプルを持ってきてくれた様子。
このころの紙の名前は、艶無しリバーシブル(仮)

左がウォームグレー、右がクールグレー

 

こうして紙になった色を見てみると、また発見がありました。PANTONEのクールグレーを、日本塗料工業会の色見本(建築用の塗装見本。以下、日塗工)と見比べると、ニュートラルなグレーにも近かったのです。ということは、さらに青みが強いグレーの紙があっても良いはず。淡いグレーと水色のちょうど中間で、光や環境によっては、グレーにもブルーにも見える色はどうだろう、と考えました。
「ブルーグレーの需要はあるはずだし、せっかくなので見てみたいよね」と弊社原田の助言もあり、「ブルーグレー」も試作してもらえることになりました。

その後、製品化する3色の色合いのバランスや、染料や原料との兼ね合いで色の微調整をしつつ、CLOUD GRAYの「イエローグレー」「ニュートラルグレー」「ブルーグレー」が決定しました。

そして、いよいよ抄造の立ち会いへ。

柏原市の大和板紙株式会社。看板は紙見本のかたち

紙がどんどん生まれているところ


できたてほやほやの紙。まだあたたかい

 

抄造の現場では、生産部の岡田さんが管理をしてくださいました。岡田さんいわく「淡い色なので、染色をする際に少し色味がブレるだけで見え方が大きく変わってしまう」とのこと。現場で調色して合わせていくのが、いつもよりも難しいそうです。

そんな状況の中で「もうすこしだけ色味をすっきりさせたい!」というような、細かいニュアンスの要望にも答えてくれて、微調整を重ねていきました。

試作のカットサンプル


あともう少しなんだけどなぁ!と悩む、岡田さんと弊社チーム

 

色の調整は、色差計という機械を使って行われます。センサーで測ると、見本の色と比べてどのくらい色の差があるか分かります。色差計と目視で確認を繰り返しながら、理想の色に近づけていきます。
色差計で測る様子


色差計で測った数値。
まだ少しずれているので、さらに調整をします


微妙な色差だけれど、この調整で、仕上がりが全く変わるのです


自然光の下でも色をチェックします


生産部のみなさん。真剣な眼差し

 

こうして、大和板紙のみなさんのおかげで、CLOUD GRAYができあがりました。

天気や時間によって色が変化する雲(CLOUD)のようなやさしいグレーと、美しい白色とのリバーシブルの紙です。

カラーバリエーションは「イエローグレー」「ニュートラルグレー」「ブルーグレー」の3色。「ブルーグレー」は水色のようにも、「イエローグレー」はベージュのようにも、環境によって印象が変わって見えるので、様々な表情を楽しめそうです。

OKサインを書きました。緊張
破れた姿も、中芯のグレーが見えて可愛いんです

 

生産部の岡田さんも「特にグレーという枠の中で色彩の差を表現した紙であるところが特徴で、少しかすれた感じの色は、独特の雰囲気があると思っています。」と、出来上がった紙の感想をいただきました。

また、今回の原料と染料の組み合わせは、大和板紙さんでは初チャレンジということもあり試行錯誤したけれど、その過程も楽しかったというエピソードを聞いて、改めて一緒につくれてよかったなぁ、と嬉しくなりました。
最後に、今回の開発に二人三脚で携わってくださった営業部の石田さんにも、CLOUD GRAYをどんな風に使ってほしいか聞いてみました。


できたてほやほやの紙を持って嬉しそうな石田さん
「弊社の紙は古紙原料を主体に板紙をつくっているメーカーで、その時の古紙原料により、多少表情が変わる可能性があります。特に今回のCLOUD GRAYのような淡い色になると色を合わせるのが非常に難しいのですが、雲のように、その時々で微妙に変わるグレーのニュアンスを面白いと言ってもらえるデザイナーさんに御採用頂ければ嬉しいです。」

上から「イエローグレー」「ブルーグレー」「ニュートラルグレー」
坪量は310g/㎡と350g/㎡での展開です。


エンボスや、キラッとした細い箔押しなんかも似合う、上品な紙に仕上がっていると思います。淡いグレーの陰影も美しいので、パッケージや装丁など立体的な印刷物にも、使ってもらえると嬉しいです。

UMA/design farmデザイナー 津田祐果
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